FC2ブログ

いきもの憑りのお話ーー36

susa

いきもの憑りのお話ーー36

進化論s(下)   
進化論を象徴する図  この項の内容は、前々回の記事を参考のこと


 この記事は、《いきもの憑りのお話ーー35》の末裔かもしれません。

 ミズクラゲと変態昆虫のライフサイクルは、完全に一致していました。

 つまり。
「なぜ昆虫が変態するのか?」という問いかけの答えは、
「なぜクラゲが変態するのか?」という問いの中にあるのです。

 何故ならば、「変態」というシステムを開発したのは、昆虫ではなく、クラゲだからです。
 それでは、なぜ、クラゲは変態するのでしょう?
 それは、クラゲがどのような世界で誕生したかを考えてみると、判ります。

 クラゲは、『地球全域が厚さ数キロメートルという途方もない分厚さの氷で覆われ、海の中に太陽光が射し込まない、そのために光合成生物が死滅した、慢性的飢餓状態の世界』でした。
 海の底には、「ブラックスモーク」「ホワイトスモーク」等と呼ばれる、有毒な硫化水素や各種化学物質の混じった熱水を放出する熱水噴出口が各所に存在しています。
 その場所は、光合成ではなく、熱と化学反応から栄養を得て生命活動を行っているバクテリアと、そのバクテリアを食べて生きている生物達のなコロニーが存在しています。

 クラゲは、そんな熱水噴出口のコロニー周辺に漂っている、栄養分やバクテリアを捉えて糧とするために、水中を漂うようになった生物だと私は考えます。
 もともと、クラゲはイソギンチャクの一種から派生した生き物なのでしょう。イソギンチャク数体を束ねてひとつの個体にまとめ、上下をひっくり返したら、ほぼそのまま、そのイソギンチャクの塊の身体構造はクラゲになります。
 イソギンチャク達がひしめき合う、かつての熱水噴出口の周辺で、少しでも餌を捕まえるべく、「水中を舞う」という奇抜なワザを編み出したのが、最初のクラゲだったのだと私は考えます。イソギンチャク達は、舞い降りてくるバクテリアの死骸や有機物質を捕まえようと待ち構えているのですから、水中に舞い上がり、イソギンチャクよりも前に回収してしまえば、事実上、栄養分の独占が出来る――
 そういう理屈で、クラゲは海中を漂う生物へと進化を遂げたのだと思われます。

 熱水噴出口を中心として生きる生物達は、ある共通した問題を
抱えています。
「火山活動が異常に活性化したり、あるいは停止してしまったりすると、自分達の命運が尽きる――滅んでしまう――」という問題です。
 何処か別の熱水噴出口まで子孫を送り届けることが出来れば良いのですが、なかなか、思うようにはいかないでしょう。
 ですが、水中を漂って「長距離移動」が可能なクラゲたちは、この問題に対処が出来ます。
 問題があるとすれば、楽園に辿りつけなかった場合は、全てが無に帰してしまうこと。
 何処にあるかもわからない楽園まで、無事にたどり着ける可能性は低いのです。
 しかし、それは自分がこの世に、たった独りしか居ない時の話。
 自分が何十人、何百人と存在した場合は、「確率の問題」は数の力によって「確実性」に変わります。

 そうです。
 クラゲが「自己のクローン」を大量に造るのは、ひとつの熱水噴出口から、別の熱水噴出口周辺まで、旅をして子孫を広めるため、だったのです。
 クラゲは、数の力で確率をねじ伏せたのです。
ビグザム・クラゲに見えないこともない

クラゲに似た物体 「ビグザムが量産の暁には、連邦なぞあっという間に叩いてみせるわ!」と言ったとか言わなかったとか。それはともかく、クラゲは海生生物の中で、もっとも成功した

 そのため、クラゲは「生殖前に自分のクローンを作る」という、とんでもない技を開発しました。自分のクローンを沢山作って海に散らばれば、だれかが楽園に辿り着くでしょう。全ては自分なのですから、「自分の子孫を次世代に残す」という仕事は、それで万事解決です。

 こうして、クラゲの卵からかえった幼生が、食べ物を必死に食べて成長し、「変身」によって沢山の繁殖体を作り出し、それらが拡散しながら独自に成長をとげ、辿り着いた場所で次世代を産み落とす――
 というライフサイクルが確立されました。

 ですが。
 このライフサイクルは、地球全域が氷に覆われていた頃に求められた仕様です。
 暖かい時代となり、海の何処であろうと、子供達が食べ物にありつけるであろう時代の子孫達は、必ずしも、クラゲのライフサイクルを踏襲する必要はありません。
 従って、クラゲの子孫達は、より最適なライフサイクルを模索しました。
イソギンチャク・クラゲ・エビ・昆虫
イソギンチャク、クラゲ、及び、その末裔たちのライフサイクルの比較図 このように図にしてみると、ライフサイクルを完成させたのはクラゲの時代で、その子孫たちは、それぞれが不要な部分を「封印」して、それぞれの生活状況に適応していることが判る。

 その結果、多くの甲殻類は、芋虫(幼生)から変態までの期間を、卵の中で処理してしまい、成体とほぼ同じ、もしくは形はまるで異なるけれど、脱皮を繰りかえして行けば成体になれる――という状態になって、孵化する、という道を選びました。
 このスタイルは、昆虫の前身である紙魚や、変態昆虫以外の昆虫達も概ね踏襲しています。

 なぜ、完全変態昆虫以前の脊椎動物達は、「変態システム」をオミットしたのでしょう?

 それはもちろん、採用した所で、使い道が無いからです。

 親の形は、その環境で生き抜く為の、理想的な姿です。

 ベストでないにせよ、それまでの祖先たちが積み上げてきた「ベター」の集大成です。

 そのベターがありながら、なぜ、わざわざ、子供たちに別の形を与える必要があるでしょう?
 その環境に対して、ベターな形態を有している親と、同じ環境で生きるのですから、形は同じか、その簡易版で良いのです。
 必要がないから、変態機能をオミットしたのです。

 そして、もうお察しだと思いますが、変態昆虫という生き物は、親の生活圏と子供の生活圏が異ります。虫の王様と言われるカブトムシだと、親は樹木の上に暮らし、樹液を舐めることでカロリーを得ますが、子供の住処は腐葉土の中で、食べ物もその腐葉土です。
 これ程、暮らしに差があるのですから、当然、姿を変えることには大きな意義があります。
 そのため、完全変態型の昆虫は、遠い祖先であるクラゲの時代の遺伝子を再び解禁して、「変身」する能力を手にしたのです。
カブトムシ(番)
カブトムシの雄(左)と雌(右) 子供たちに、最も人気のある昆虫の一つ、カブトムシ。かつて、カブトムシの生形は野生生物としては驚異的な繁殖力を誇った、最も成功した生物であったはずである。何故ならば、圧倒的な種類を誇るからである。そして、それは産み落とした子供が非常に高い確率で成虫となり、その成虫が、また子供を残すーーという、付け入る隙のない決して揺るがない盤石な基盤によって築かれた。しかし。現代では人間が作った街頭に集まり、落下したカブトムシが自動車に轢かれて無残に潰されるという光景をあちらこちらで見かけるようになった。圧倒的な存在として君臨していた、昆虫の王様、カブトムシの帝国も、もしかしたら、風前の灯なのかも知れない。

 ここで、間違えて欲しくないことは、完全変態昆虫が手に入れたものは、「子供時代のイモムシ形態」であって、成体になった時の姿ではない、ということです。
「成体の姿」が先にあったのです。
 そして、そこに、「イモムシ」が追加されたのです。
 間違っても、神様が設計図を間違えた出来損ないみたいなイモムシが、突然覚醒して、「極めて完成度の高い、硬い甲羅に包まれた昆虫」という新しい姿を手に入れたわけではないのです。

 そして、完全変態にこのような劇的な変化をもたらしたもの。完全変態を手に入れる、その引き金となったものは、「羽」以外に、考えられません。
 昆虫は、「羽」を手に入れたことで、移動範囲が桁違いに広がりました。桁が違うと言っても、十倍、百倍なんていう、チンケなレベルではありません。1万倍、100万倍、いいえ。億倍、あるいはそれ以上、行動範囲が拡大しました。
 まさに、岩肌にしがみついていたイソギンチャクが、海の中を舞う「クラゲ」へと変貌を遂げた、あの瞬間の再来です。
 成虫となった際の行動半径がこれ程までに拡大すると、子供時代に生きる場所は、それまでと全く異なる基準で選ぶことが可能となります。
 もはや、どんな場所で成長しようと、大人になった時には、出会いの場所へ、文字通り、「飛んでゆくことが出来る」のですから。
 こうなると、子供時代を過ごす場所は、「可能な限り、高い確率で大人になれる環境」が最良となります。

 可能な限り、子供たちの生存率を向上させる。
 それこそが、種族全体の生存率、あるいは、繁殖率を最大化する、一番の道となります。
 生物の繁殖力は、単純に式にすると、

 
メス一匹が産み落とす卵の数 ✕
 無事に大人になれる割合

 となります。

 そして、完全変態昆虫たちは、子供達を可能な限り安全に大人まで成長させる、最適な場所を発掘したり、技術を発案したりしました。それが、地球上で、最も成功した生物のひとつ。
 という地位を、昆虫にもたらしたのです。

 不完全変態の昆虫は、無事に大人になれる確率は、せいぜい数%でしょう。
 ですが、腐葉土の中で大人になるカブトムシは、どうでしょう?
 条件が良ければ、比較的簡単に、8割、9割の個体が、無事に大人になれるのではないでしょうか?

 両者がそれぞれ、100の卵を産んだとして、不完全変態の昆虫の数は、そう簡単には増えません。
 ですが、カブトムシの場合だと、1年で数百倍に増えることも、難しいことではありません。
 これが、完全変態昆虫の強さ。
「繁殖力」の正体です。
 そして、この数の力によって、様々な環境に適応し、様々な形態を手に入れ、「種」の数を増やしていったのです。
 競争率が高い世界で、多くの敵達と「喰うか喰われるか」の日々をくぐり抜け、やっとの思いで子孫を残すカマキリのような生き方よりも、人目を忍びながら黙々と食べて力を付けて、条件が整った時、満を持して外の世界へ飛び立ってゆく――
 その方が、遙かに生存率は高いのです。

 この高度な戦略の、もっとも根幹をなしているのが、「羽」です。
 飛行能力無くして、このような戦略は成立しえないのでえす。

 羽を持たない生き物が、完全変態昆虫の真似をして、子供を安全な場所に産み落としても、その子供たちは、大人になった時、あまり遠くまで移動することが出来ないので、すぐに周辺は兄弟姉妹でひしめき合って、食べ物を残らず食い尽くして、飢餓で全滅ーーというような、悲惨な結果を招くだけでしょう。
 羽根を持っていることが、あるいは、遠くまで移動できることが、この戦術を成功させる、必須条件なのです。

 多少付け加えておくべき事が、無いわけでもないので、もしかしたら、この記事の「補足」を書くかもしれません。
 書かないかも知れません。

 つづく


追:こんな資料を見つけました。

2014-01-23

クラゲの変態を解明する

沖縄科学技術大学院大学(OIST)


スポンサーリンク

Posted bysusa

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply