そして、《変態》という人種が生まれた――⑭

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そして、《変態》という人種が生まれた――⑭

オーム真理教の教祖と信者たち
説法をするオーム真理教の教祖とそれを聴く信者たち 1980年台に発足した新興宗教団体‥オーム真理教は、アニメ等を巧みに使い、若者を中心に信者を獲得、急速に勢力を拡大していった。教義の中で、教祖麻原彰晃は絶対的な真理にたどり着いた唯一の存在と定義づけられ、彼の言葉は神の言葉と同等のものとして扱われた。その結果、当然のように、教祖は、「日本(世界)の統治者」にならねばならないという方向に向かう。政界への進出を図るが失敗。銃火器、弾薬、化学兵器の製造によって武装し、武力による権力の剥奪へと方向転換を図る。また、LSDや覚せい剤の製造も行われ、依存性が比較的小さいLSDは信者に幻覚を見せる修行の一環として、依存性の強い覚せい剤は資金源として某呂k団への売却に用いられた。1994年、松本市において毒ガス兵器サリンを試験散布。この時、毒ガス散布に使用された改造車両は「コスモクリーナー(宇宙戦艦ヤマトに登場するギミック)であった。」また、この時期には誘拐や殺害といった凶悪な行為が頻繁に行われるようになっていった。そして、1995年3月20日、戦後日本における最悪の無差別テロ事件地下鉄サリン事件を引き起こす。死者12名。被害者は数千人という規模で発生し、多くの方々が、いまも重い後遺症に苦しんでいる。以後、警察はオーム真理教と全面対決・教団撲滅の方向へ大きく動き出し、5月16日、教祖である麻原彰晃の身柄を拘束し、これ以後、オームによる犯罪は沈静化の方向へ向かった。

 この記事は《そして、《変態》という人種が生まれた――⑬》の続きです。

 オーム真理教は、アニメの世界観を自らの思想・世界観の中に数多く取り込んでいて、例えば毒ガス兵器であるサリンのことをサリーちゃん(魔法使いサリーの主人公)、毒ガス散布に使用する改造車をコスモクリーナー(宇宙戦艦ヤマトに出てくるギミック)と呼称するなど、相当にヲタク色の強い集団でした。
「幼稚」と言い換えても良いでしょう。
 当然、機動戦士ガンダムの世界観も彼らの中に根を張っていて、他でもない、教祖・麻原彰晃の好きなアニメの一つが、この機動戦士ガンダムでした。
 そして、機動戦士ガンダム逆襲のシャアが放映されたのが1989年
 オーム真理教の活動・思想に、この映画(シャア・アズナブル)の存在が少なからず影響を与えたことは、ほぼ間違いないでしょう。

 だとすれば、麻原にとって、シャアは自身の分身のように感じられたに違いありません。

 シャア‥ダイクン(シャア‥アズナブル)は、人類をニュータイプへと昇華させるため、地球に隕石を落とし、あえて地獄を生み出そうとしました。
 麻原彰晃(松本
智津夫)は、カルマを取り除くという名目で、サリンをばら撒き(さらに武装させた信者を蜂起させることによって)、大勢の人々をポア(殺害)しようとしました。

 ある意味で、二人はとても似ています。

 組織の頂点に君臨した、という意味で。
 そして。
「人間のクズ」だという点で。
(あるいは、現実から逃げまわった結果、そこまで追い詰められてしまった、弱い人間である、意味で)

 シャアは、他者に対してあまり情愛を感じる人間ではありませんでした。

 自分は他の人間とは違う。
 ジオン・ズム・ダイクンの息子にしてニュータイプなのだ。
 誰よりも特別な存在であり、人類を
導いてやらねばならないのだ。
 それが、いつの間にか、手段と目的が逆転し、
《そのためには、犠牲が出るのも止む終えない》
 という所にたどり着きました。

 シャアの思考回路は、そのように、「偉い自分」が大前提であるため、都合が悪い状況が発生するたびに、そのしわ寄せを他者に押し付けることでのり切ろうとしたのです。
 そして、たどり着いた先が、「隕石落とし」でした。

 麻原彰晃の場合、たどり着いた先が、「サリンの散布」であり、「自分達の向上で製造した銃を信者に持たせ、放棄して国を乗っ取る」という計画でした。

 そして、当時のオーム信者達の殆どは、そのような情勢変化の中、麻原から離れてゆくどころか、信仰をますます強固なものにしてしまいました。

 何故でしょう?

 それは、恐ろしいからです。

 麻原彰晃を捨て、自分達に冷淡な世間の中で、非難の声を浴びせられながら、身を小さくしているよりも、麻原を信じ続けるほうが、精神的に安楽なのです。

 ネオジオン内部でも、同じようなことが起こっていたでしょう。自分達の進んでいる方向はオカシイ。地球に隕石なんて落として、何の意味があるんだ?
 そう思っていた人間が居たとしても、ネオジオンから抜けて、連邦の捜査員に、あるいはネオジオンからの粛清に、怯えながら身を潜めているより、ネオジオン万歳、シャア総帥万歳と叫んでいる方が、精神的に安楽なのです。

ネオジオン、シャアの演説「父ジオンのもとに召されるであろう!!」
ネオジオン総帥として演説中のシャア 人が増えすぎて、地球環境は絶望的に悪化した。母なる地球を再生・永続させるため、人間は宇宙にスペースコロニーを建設し、そこに移住することを決めた。ニュータイプとは、そのような文脈の中から、「地球を壊すことが無いように、、みなでもっと上手に生きて行ける方向に向かって変質した、次の時代に適応した人間」であったはずである。つまり、ニュータイプとは、手段に過ぎなかった。ところが、シャアは隕石落としをするにあたって、手段を目的に変えてしまった。このようにして、一度「タガが外れて暴走が始まった組織」というのは、よほどのショックがない限り、立ち止まることができなくなる。そして、多くの人々を不幸に引きずり込んでしまう。これは、歴史が繰り返し証明してきた真理である。

 ナチスドイツでも、やはり同じことが起きていたでしょう。
 ナチスの方針と違うからというだけの理由で、あるいは、ドイツ民族ではないというだけの理由で、どうして、処分しなければならないんだ?
 そう感じた人間は、大勢いたはずなのです。でも、逆らうのは怖いのです。
 ヒトラー総帥は間違っているのではないだろうか、と疑うことは恐ろしいのです。
 そういうとき、恐怖を打ち消すために、もっともっと、「総帥万歳!!」を叫ぶことで、不安を打ち消そうとする。
 戦中の日本も同じです。
 戦争したって、俺達には何も良いことはない。
 そもそも、日本は間違っているんじゃないか?
 それ以前に、この戦争は勝てないんじゃないか?
 などと考えることはとても恐ろしいことなので、反対に、「天皇陛下万歳!!」「大日本帝国万歳!!」を叫び、自分の命も、なにもかも、戦争遂行のために捧げだしてしまうのです。
 そのほうが、恐怖が少なくて済むからです。

 ちなみに、こういう人のことは、《変体》とは言いません。ありふれた、《凡人》です。
 臆病で、ちっぽけな、どこにでもいる、ただの人です。

つづく

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Posted bysusa

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