小説「ぺ天使」

小説「ぺ天使」
「神様、お願いですから素敵な出会いを下さい」
何千、何万と祈ったその願いが、届いたのかどうかは判らないけれど、夢に神様とおぼしきご老人が現れて、私に言った。
その願い、叶えてやっても良いぞ。ただし、有料で、な。
って。
「ゲッ。金を取りやがるのか、このクソじじい」
夢だからかしらないけれど、心の中で思った事が、そのまま、口から漏れていた。
「……。そうか。出会いなんか欲しくないのか」
「嘘ですシャレです、ジョークです。ご免なさい、お髭がとってもすてきな叔父様。お願いですから出会いを下さい」
なんだろう?
夢だからかもしれないけれど、私ってこういうキャラじゃないはずなのだけど、よく判らないまま流されてゆく。
「最初から素直にそう言えば良いのじゃよ。」
ジジイは勝ち誇った様に笑う。
「それに、ワシは、別に金なんてとらんしな。ワシが欲しいのは、お前さんの魂じゃ」
「悪魔じゃねえか!!」
またまた、心の中がそのまま、ポッと口から飛び出る。
なんだろう、この不思議空間。
「アハハハハハハハ。お前さん、本当の幸福ってモンは、苦しみを乗り越えた先にしかないんじゃよ。その辺が、全然理解出来ておらんのじゃなぁ」
「いや。魂をとられるのと、苦しみを乗り越えるのとは、全然違いますよ」
「……本当に、そうか? よく考えてみなさい。魂と苦しみが、全然違うモノかどうか?」
ジジイがやたらと自信ありげに言うから、私は自信が無くなって、少々怯んでしまう。
【魂をとられる】
ってのは、「死んじゃうとか、心が無くなるって事」、でしょ?
【苦しみを乗り越える】
ってのは、「嫌なこと、辛いことを、はね除ける力を持つ事」でしょ?
何処に関係上がるのよ。
「意味ワカンナイ」
「おぬし……。全然、恋の才能が絶望的に足りていないのう。本当に美味い料理と恋愛は、センスがないとできんのじゃぞ」
ジジイが、心を抉る様なことをさらりと言ってのける。
力が抜けて、身体がぐらつく。
「わ。わたしはただ、全然意味の違う言葉を二つならべて同じ意味だっていったあんたに対して、納得出来ないって言ってるだけじゃない。それで、なんで恋愛のセンスなのよ? 誰が聴いたって、あんたの言ってることの方が、おかしいって言うわよ」
「じゃが、恋愛とはそもそも、男と女という、全然違うモノを二つ並べて、美味しく纏めるものと違うンか? うん?」
意味は判らないけれど、ジジイがもの凄く上手いことを言った。
それで私は、納得は出来ないけど、一本とられた気がした。
「よいか? お前さん、アイスクリームが食べたくなったら、どうする?」
「コンビニへ行きます」
ジジイが、浜辺に打ち上げられて、小学生に踏みつけられたエチゼングラゲの在外を哀れむ様な、もの凄い顔をした。
「スペシャルなミルクと、スペシャルな卵を用意するところから、自分で作ろうという気はないんか?」
そ、そ、それは、かなり、手間は掛かる――けど――確かに、それも魅力的なプランではある。
だけど、ジジイに対する対抗心からか、私の口は、ソレとは全く違う言葉が飛び出していた。
「コンビニだって、美味しいアイスクリームは売ってますよ。ちょっと高いけど……」
「は~。つまり、お前さんは、何万、何十万の雌鳥が詰め込まれた鶏舎で量産される卵と、何処にでもある平凡な牛乳を、オートメーションの機械が淡々と加工するような、ベルトコンベアー方式の恋が欲しい、と?」
そう言われると、途端に私は、なんだかとても、惨めな気持ちでいっぱいになる。
つづく
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すこしボリュームがあるので、この続きを読んでやろうという方が居ましたら、下のリンクのにありますので、そちらからおねがいします。
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