小説「魚と人間」

susa


フィッシュマン
※画像は、フィッシュマンの涙という映画のシーンからの借用で、
本文との関連はありません。

小説「魚と人間」


 ある大きな川の片隅に、小魚たちの楽園がありました。
 その場所は、入り口が狭すぎて、小魚より大きな生き物が入り込むことが出来ないのです。
 ところがある時、そこに中くらいの魚が大量に乱入してきて、小魚たちを食べ漁ってゆきました。
 小魚たちは、
「お願いです。助けて下さい」「私とあなたは、同じ魚、生き物ではないですか」「どうして、こんな惨いことをするのですか?」「どうかお慈悲を。まだ死にたくないのです」
 等と懸命に救いを求めましたが、その声は、中魚には届きませんでした。

 お腹がいっぱいになった中魚達は、悠々と自分のねぐらに帰りました。
 ねぐらは、中魚達の天国でした。
 ねぐらは入り口が狭すぎて、中魚より大きな生き物が入り込むことが出来ないのです。
 ところがある時、そこに大きな魚が乱入してきて、中魚たちを食べ漁ってゆきました。
 中魚たちは、
「お願いです。助けて下さい」「私とあなたは、同じ魚、生き物ではないですか」「どうして、こんな惨いことをするのですか?」「どうかお慈悲を。まだ死にたくないのです」
 等と懸命に救いを求めましたが、その声は、大魚には届きませんでした。

 お腹がはち切れんばかりになった大魚は、満足げに川を泳いでいました。

 と、その時、目の前に、一匹の虫が落ちてきました。

(お腹もいっぱいだし、別に食べなくても良いかなぁ……)
 と一瞬だけ、思ったりもしたのですが、そこの辺りは、生き物の浅ましさというか何というか、心と体は裏腹で、身体の方が勝手に反応して、気がついたら食らいついていました。

 そして、口の中に激痛が走って、身体がぐいぐいと空の方に、というか、川岸に向かって引き上げられてゆきました。
 そうです。
 大魚が「虫」と思ったソレの正体は、実は人間が作った疑似餌だったのです。

 大魚は、
「お願いです。助けて下さい」「私とあなたは、同じ生き物ではないですか」「どうして、こんな惨いことをするのですか?」「どうかお慈悲を。まだ死にたくないのです」
 等と懸命に救いを求めましたが、その声は、人間には届きませんでした。

 人間は、大魚を持って家に帰りました。
 人間の家の中には、小さな水槽がありました。
 その時、大魚はまだ生きていて、その水槽の中の光景もハッキ確認出来ました。

 川の中で時々見かけた、小魚達がそこにいました。
 怯えている気配は全く無くて、川の中で見かけた小魚よりも、遙かに幸せそうでした。

(あぁ。そうか。この人間は、別に魚を食べる悪い人間ではないのかな……)

 それで大魚は少し安心したけれど、世の中はそんなに甘くはなくて、やっぱり、人間によって鱗を落とされ、ハラワタを取り除かれて、三枚におろされ、皮を剥がれ、ぶつ切りにされて、野菜と共に鍋でぐつぐつと煮込まれて、調味料で味を整えられて、その夜のおかずにされてしまいました。


 生物は、自分と関連の薄い相手には優しくなれるのに、関連が深くて自分よりも弱い相手に対しては、とても残酷に振る舞う傾向ああります、というお話しです。



https://novel.fc2.com/novel.php?mode=tc&nid=209394
(上アドレス=FC2小説内に、本文と同様の小説が置いてあります。
感想とか意見とかが有る方は、そちらの方におねがいします)

※駄文ではありますが、転載等は禁止とさせて頂きます。

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