人間は、どうして一夫一妻制を選択したのか?ーー㊤

susa

人間は、どうして一夫一妻制を選択したのか?ーー㊤

猿の夫婦

 この記事は《人の脳は、どうして大きくなったのか?――その⑤(最終回)》の続きみたいなものなので、そちらから読んでいただいたほうがわかりやすいです。

 チンパンジーの社会は、オス達が築き上げた縄張りの中を、メス達が渡り歩くことで成立しています。オスが群れを移動することは事実上不可能ですが、メスはある程度自由に移動出来ます。
 その自由を担保する為に、チンパンジーのメスは、どのオスとも交尾をします。
「自分の子供を産むかもしれない」という事が、チンパンジーのメスを保証しているわけです。

 一頭の雄がハーレムを作るゴリラ社会において、性は「群れのオスの所有物」です。
 その代わり、メス達はオスの縄張りの中で安全に生きる事が保証されています。

 では、人間社会における「性」とは、いったい何でしょう?

 どのような役割を果たしているのでしょう?
 といっても、「現代社会の性」についての考察ではありません。
 貨幣経済下において、「性」は貨幣によって取引出来る「商品」として取り扱われています。売春ばかりでなく、一般的な婚姻にも、この傾向は反映されています。それは、「人類の進化」とも、「神秘的な謎解き」とも、関係の無い領域だと思います。

 人類が人類としての輪郭を確立させた時、「性」はどのような役割を果たしていたか?
 今回のテーマは、コレです。
 というか、もう少し砕いた「人間は、何故夫婦という単位を作ったのか?」の方が、判りやすいですね。
 チンパンジーと同じ乱婚型だったはずの人類を、一夫一妻制に移行させたものの正体とは、いったい、何だったのでしょう?
 人類は、なぜ、男女の在り方として、「ハーレム型(一対多型)」や「乱婚型(多対多型)」ではなく、「夫婦型(一対一型)」を選択したのでしょう?

 おそらく、猿人だった300万年前までは、人類の祖先も乱婚型社会を形成していたと考えられます。
 当時、人類の祖先はまだ森の中に暮らしていました。
 森の中で、しかし、チンパンジーに破れてしまって、森の隅の「チンパンジーが暮らしにくい場所」つまり、「背の低い木」しかないような、あるいは「美味しい木の実があまり成らない」ようなところに暮らしていました。
 私たちの祖先は、木から木へと枝伝いに移動出来ない代わりに、二本の足で歩いたのです。そして、食事の中心は落ちている木の実や、虫などでした。
 腹が減って、しかし食べ物がない、という時には、チンパンジーの縄張りの中へ忍び込んで食べ物を盗んできたでしょう。
 現代で、猿や猪が人間の畑から作物を盗むのと同じような感じです。
 チンパンジーは集団で私たちの祖先を捕まえようとしたでしょう。私たちの祖先は、それを走って逃げたわけです。

 この様な生活様式においては、チンパンジーと同じような乱婚型の方が、生きてゆくのに都合が良かったと思われます。特定のオスと結びつくと、そのオスに何かあった場合、自分も共倒れになってしまいますが、不特定多数のオスと結びついていれば、そういう心配は必要ありません。
 そして、群れの縄張りを守る時は、皆で守るので、個々の腕力が圧倒的な意味を持つこともなかったでしょう。
 勿論、群れの中の序列は存在していたでしょうが。
 しかし、決してそれは、「決定的なもの」ではなかったはずです。

 おそらく。
 人類が一夫一妻制に移行しなければならない事態が生じたのは、300万年前から250万年前に掛けての、猿人から原人へ移行した時期です。
 この頃、体毛が薄くなり、脳が一気に巨大化しました。
 体毛が失われた結果、体温の維持が大きな課題になりました。
 また、アフリカの大地は大きく姿を変えました。
 熱帯雨林が縮小し、サバンナが広がっていったのです。

 この時期の人類の祖先は、サバンナの各所に点在した小さな林(オアシス)を渡り歩く様な生活を送っていたのではないかと考えます。
 体毛がなくなったのは、長い距離を歩き続けたり、獣に襲われた時に少しでも速く、そして遠くまで走らなければならないからです。身体に毛が生えていたら、激しい運動を長時間続けることは非常に過酷です。毛が薄ければ、同じ運動をしても、かなり余裕が出来るでしょう。ですから、体毛が少なくなりました。

 しかし、これでは、体毛が果たしていた「保温機能」が失われたことになります。
 それで、「熱源」として「脳」を活用されることとなりました。

 ですが、これだけでは、どうしても、

 睡眠中の熱量は慢性的に不足なのです。


 最初にこの事が問題になったのは、赤ん坊だったはずです。
 身体が小さな赤ちゃんは、すぐに身体から熱が奪われてゆきます。
 冷えすぎると、風邪をひいたり下痢をしたり、最悪の場合は死亡するので、お母さんが全身を包み込む様にして、赤ちゃんの身体が冷えないように、必死に暖めたことでしょう。

 やがて、赤ちゃんはある程度成長して、弟か妹が産まれてきます。
 今度は、お母さんはその弟、妹を、同じようにして育てるでしょう。
 しかし、成長したといっても、まだまだ、ちいさな子供です。体温の低下には耐えきれません。
 それで、今度はお父さんやおじいちゃん、おばあちゃん、あるいは(血が繋がっていなくても)おじさん、おばさん、お兄さん、お姉さんといった人が、この子を抱いてくれることになります。

 これが何世代にも渡って繰りかえされている内に、「大人同士でも、抱き合って眠る」というのが、ごく一般的な事になったでしょう。
 睡眠は、基本的に身体が温かい方がよく眠れるからです。
(夏場の熱帯夜みたいなものは別です)

 そして、私たちの祖先の身体は、この「誰もが抱き合って眠る」という状況に対して「相応しい仕組み」を用意します。
 それこそが、ジャジャジャジャーン。

【加齢臭】です。

 ある程度の年齢に達した男性は、身体から臭い匂いを放つ様になるのです。
(嫌な仕組みだ)
【加齢臭】によって、娘達は父親や祖父に抱かれることに拒絶反応を示す様になりました。(加齢臭は女性にもあるそうです)
 その方が、娘達にとっては良いことなのです。
 何時までも父親にべったりとくっついていたら、今度は、婚期を逸してしまいかねないからです。それでは、自分の血を後世に残してゆく事が出来なくなります。

 若い娘は、娘同士で抱き合って眠ったり、小さな子供だったり、嫌な匂いを感じない、「血の繋がりの薄い大人」と共に眠りについたでしょう。
 そして、今上げた最後のものは、事実上の番(婚姻関係の成立)とみなされたでしょう。

 つづく。

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Posted bysusa

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